第2章 出会いの春
カートにカゴを乗せ、まずは野菜売り場へ行った。
小さな店だがなかなか品揃えが良いし、物も良い。
人参が3本入った袋をカゴに入れると、徹が嫌そうな顔をした。
「人参入れんの?」
「うん、彩りになるしね。」
「俺人参嫌い…。」
「なに子どもみたいな事言ってるの。嫌ならよけて食べて。」
徹は不満げな声を漏らしたが、一々彼の好き嫌いに付き合っていられない。
牛蒡、椎茸、大根、里芋…次々とカゴに入れていく。
「俺椎茸も嫌い。」
「だから、嫌いな物はよけて食べて下さい。」
徹は不満を漏らしながら飲み物売り場へ行った。
やっと煩いのがいなくなったと、気が楽になる。
私は次にお肉売り場へ向かった。
鶏肉を手に取る。
我が家では、煮物に鶏肉を入れるのが定番だ。
すると、徹が2リットルのペットボトルのジンジャエールを2本抱えて戻ってきた。
カゴの中の鶏肉を見て、その後私の目を見つめてきた。
「なに?」
「鶏肉買うの?」
「うん。煮物に少し入れるの。」
「ついでに唐揚げ作って。塩の。」
唐揚げ好きなのかな…。
どうせ全部は使わないし、いいか。
「いいよ。唐揚げ好きなの?」
「超好き。」
徹がご機嫌になった所で、私達は会計を済ませてアパートに向かった。
徹は然り気無く私の荷物まで持ってくれた。
こういう所は優しいというか男らしいというか…。
アパートに着き、それぞれ部屋に戻るのかと思いきや、徹は私に付いてきた。
「荷物持ってくれてありがとう。ご飯なら後で届けるよ?」
「めんどくせえからシュリの部屋で食う。」
また自分勝手な事を言い出した。
部屋はまだ荷物を片し終わってなくて汚いし、何より異性を部屋に入れるのは抵抗があった。