第15章 初恋にさようなら
待ち合い室で順番を待っている間、徹は一言も言葉を発しなかった。
「ちょっとお手洗いに行ってくるね。」
徹にそう告げ、トイレに向かった。
用を足し、手を洗っていると、水の中に赤い滴が落ちた。
「え…なに?」
目の前の鏡を見ると鼻血が出ていた。
慌てて鞄からティッシュを取り出した。
何枚ものティッシュが真っ赤な血で染まっていく。
なかなか血が止まらず、ティッシュが全て無くなってしまった。
私はハンカチを取り出し、鼻に当てた。
しばらくして、漸く血が止まった。
ハンカチは、自分の血で真っ赤に染まってしまった。
鼻血など滅多に出ないため、少し驚いた。
待ち合い室に戻ると徹が心配そうな顔で私を見た。
「随分長かったな。大丈夫か?」
「手洗ってたらいきなり鼻血が出てきて…なかなか血が止まらないからびっくりしちゃったよ。」
「鼻血…?」
徹の顔色が変わった。
「うん。どうしたの?そんな顔して。」
「…いや、なんでもない。」
「明智さーん、診察室へお入り下さーい。」
看護師さんに呼ばれ、何故か徹も一緒に診察室に入った。