第14章 兆候
ふと、懐かしい顔を思い出した。
「私ね、長野に幼馴染みがいるんだけど、その子も一緒にケーキ屋さんでバイトしてて…今はパティシエになるために専門学校に通ってるんだよ。男の子なのに凄い手先が器用でね。」
「男?」
徹は少し驚いた顔をした。
「うん、涼(リョウ)っていう子なんだけど…女の子みたいな見た目なの。性格も女の子っぽいんだよ。甘いものとか可愛いものが好きなの。だからよく二人でケーキバイキング行ったり可愛い雑貨屋さん行ったりしたんだ。」
「へぇ…そんな男いるんだな。」
徹は苦笑いをした。
同じ男の徹からしたら、理解し難いのかもしれない。
「夏休みに長野に帰ったら会いに行こうかなー。」
「長野かー…行ったことねぇや。」
「そういえば、徹はどこ出身なの?」
「俺は静岡。」
「静岡かー、行ったことないなぁ。」
お互いに上京しなければ絶対に出会うことはなかっただろう。
「なんかさ、全然違う所に住んでたのに、こうして出会うって凄いよね!」
「そうだな。」
そう考えると感慨深い。
徹とこうして出会ったのも何かの縁なのかもしれない。
勿論、直人とも…。