第2章 出会いの春
とりあえず、気を取り直して食事を頂く。
「いただきます。」
一口食べる。
口の中に広がるどこか懐かしい家庭的な味。
凄く美味しい。
「美味しいー、幸せー。」
そんな私を徹がじっと見つめる。
「な、なに?」
「いや、すげーうまそうに食うなって…。」
「だって凄い美味しいんだもん。」
「そんなにうまいなら一口くれ。」
そう言って、徹は少し身を乗り出して口を開いた。
これは、何だ、あれか?
私が口に運ばなきゃいけない感じなのか?
仕方なく、お箸でカツを徹の口に運んだ。
「おー、確かにうまい。」
「でしょ?」
数十分後、2人とも食事を終え、会計に向かった。
「1960円になります。」
私がお財布を出す前に、徹が払ってくれた。
そう言えば、先程のダーツのお金も払っていない。
「徹、さっきのダーツのお金と今のお金、合わせていくら?」
「別にいらねーよ。」
「ダメだよ、悪いよ。」
「めんどくせぇからいいって。」
徹は眉間に皺を寄せた。
不本意ながら、お言葉に甘えさせてもらうことにする。
「あ、ありがとう。」
「ん。」
徹は素っ気なく返事をした。
段々と、徹の性格が解ってきた気がする。
女性関係に関してはだらしなさそうだけど、いざと言う時は頼りになるし、不器用なだけで案外優しいのかもしれない。
「次はどこ行く?」
徹に聞かれて、腕時計で時間を確認する。
時間の流れは速いもので、既に午後2時を回っていた。