第14章 兆候
徹から体温計を受け取り、熱を計ると37.5℃だった。
「微妙に高いな…病院行った方がいいんじゃねーか?」
「大丈夫。多分、ちょっと疲れが出ただけだよ。」
徹は納得していない様子だった。
「風邪薬飲むか?救急箱に入ってるけど…。」
「うん、それ飲んで少し様子見るよ。」
上京する時、母が救急箱に体温計や鎮痛剤、風邪薬などを入れて持たせてくれたのだ。
徹はコップに水を入れて持ってきてくれた。
「ほら…起き上がれるか?」
「うん、大丈夫。」
自力でゆっくりと起き上がり、徹から水を受け取って薬を飲んだ。
「ありがとね。」
「ああ…今日は1日寝てろ。何か食べれそうか?」
「んー…あ、プリン食べたい。」
「わかった。買ってくる。」
そう言って徹は部屋を出た。
天上を見つめながら、直人のことを考えた。
いつ、引っ越すのだろう。
最後に見送りくらいはしたいが…迷惑だろうか。
「もう、会えなくなっちゃうのかな…。」
そう思うと、無性に寂しくなった。
数十分後、徹が戻ってきた。
「プリン以外にも適当に色々買ってきたから。」
「ありがとう。ねぇ徹。」
「んー?」
徹が買ってきた物を冷蔵庫にしまいながら返事をした。
「直人ね、このアパートから出て行くんだって。」
「…え?」
徹が冷蔵庫を閉めて私の傍に座った。