第14章 兆候
「シュリ、泣かないで。」
「ごめんね…私に泣く権利なんて、ないのに…っ。」
「違うよ。俺、シュリの笑った顔が好きなんだ。だから、笑って?」
そう言った直人は、あの向日葵のような笑顔を浮かべていた。
いつも、私の心配をしてくれた。
いつも、美味しいって笑いながら私の作ったご飯を食べてくれた。
いつも、私の味方でいてくれた。
今も、私のために笑ってくれている。
直人の方が辛いはずなのに。
「直人、ありがとう。」
私は涙を拭いて笑った。
私達が恋人だった期間は短かった。
特別なデートをすることも、体を重ねることもなかった。
でも、とても幸せだった。
直人…ありがとう。
私は何度も何度も直人に伝えた。