第13章 大学祭2日目
「女子盛り上がってますねー。全部丸聞こえですけど。」
田中先輩がこれ以上追いつめたら倒れるんじゃないかと思うくらい顔を赤くしている相田先輩に言った。
こいつもなかなかのSだな。
「瞬、お願いだからもう何も言うな。言わないでくれ。」
「卒業前に付き合えて良かったじゃないですか。」
「まぁ…それはそうだが…。」
テントを畳みながらシュリを見る。
他人のことなのにあんなに嬉しそうに騒いで…本当にお人好しだな。
俺には理解出来ない感情だ。
「羽山君もシュリに指輪買ってあげたら?」
…出たな別所。
「うるせぇな。それよりお前と七瀬何かあっただろ?」
「どうしてそう思うの?」
「呼び方、別所先輩から紫音に変わってたから。」
「ああ…なるほどね。でも言えないな。七瀬に言わないでって言われたから。」
「お前も呼び方変わってんじゃねーか…。」
七瀬の奴、あんなに別所のこと嫌がってたのに。
こいつら本当、何があったんだよ。
それにしても、女って生き物は指輪への憧れやこだわりが凄いと思う。
「…馬鹿馬鹿しい。とか思いつつシュリも貰ったら喜ぶのかな…なんて考えたりしてる?」
別所が再び話しかけてきた。
しかも俺の思ってることをそのまま口にした。
「お前はエスパーかよ!」
「羽山君が分かりやすいんだよ。」
本当に不気味な奴だな…。
片付けを終えると、シュリが話しかけてきた。
「小山先輩と相田先輩付き合うことになったんだってー。」
「お前らの会話全部聞こえてたから。」
「え、そうなの?」
「相田先輩、今にもぶっ倒れそうだったぞ。」
俺は然り気無くシュリの左手の薬指を見た。
サイズは…7号くらいか?
そんなことを考えている自分に恥ずかしくなった。
「徹、顔赤いけど大丈夫?これから飲み会だよ?」
シュリが俺の顔を覗き込んだ。
「あー…大丈夫大丈夫。」
適当にあしらうと、シュリは七瀬の隣に行った。
いくら俺の気持ちを伝えても、シュリが好きなのは池田だ。
そう思うと、少し虚しくなった。