第13章 大学祭2日目
ああ、嫌なことを思い出してしまった。
「石川さん?」
別所先輩に名前を呼ばれて我に返った。
「どうして泣いてるの?」
そう言われ、自分が涙を流していることに気付いた。
「な、なんでもないです。」
咄嗟に別所先輩に背中を向けた。
この人にだけは知られたくない。
絶対にからかわれる。
「石川さん、こっち向いて。」
「ちょっと待って下さい。目にゴミが入っちゃって。」
「嘘でしょ。こっち向いて。」
「嘘じゃないですよ。」
「こっち向け、七瀬。」
いつもの穏やかな口調ではなく、強い口調でそう言われた。
何故か素直に従っている自分がいた。
「何なんですか、もう…。」
「写真部の部室に行こうか。」
別所先輩に手を引かれ、二人で部室に向かった。
部室に入ると、別所先輩がいつも座っている席に座らされた。
別所先輩はあたしの正面に座った。
暖かい陽射しが丁度当たる。
「そこ、暖かくて気持ちいいでしょ?」
「はい。だからいつもこの席に座ってるんですね。」
「うん。光合成ってやつ?」
その言い方が面白くて、つい笑ってしまった。