第13章 大学祭2日目
「別所先輩、離して下さい。」
あたしの言葉を無視して歩き続ける別所先輩。
いい加減、堪忍袋の緒が切れそうだ。
「離せチビ。」
そう言うと、別所先輩は漸く足を止めた。
「それ、俺の前では禁句ね。」
「あー、やっぱり気にしますよね。165あるかないかくらいですもんね。」
嫌味たっぷりにそう言うと、別所先輩が振り向いた。
「自分より小さい男は嫌?」
「別に小さい男は嫌じゃないですけど、強引な男は嫌いです。」
「少し強引なくらいでいかないと、君言うこと聞いてくれないじゃん。」
「何で別所先輩の言うこと聞かなくちゃいけないんですか?あたし前にも言いましたよね?彼氏いるって。」
というのは、嘘だ。
いや、正確にはこの前言ったのは本当。
だけどその日の放課後、彼に呼び出されて会いに行くと、彼は見知らぬ女の子を連れて来た。
背が低くて、可愛らしい女の子だった。
「この子を好きになったから、別れてほしい。」
そう、告げられた。
彼は、長く付き合ったあたしより、つい最近大学で知り合ったその子を選んだのだ。
突然別れを告げられたからといって、取り乱したりするのはあたしのキャラではない。
「わかった。幸せになってね。」
それだけ伝えて、その場から去った。
本当は、泣きたかった。
どうして?って。
嫌だ。って。
だけど、そんなこと自分のプライドが許さなかった。
シュリと徹に話すタイミングも掴めず、今に至る。