第13章 大学祭2日目
華道部のカフェは、他の部が開いているカフェよりも静かで人も少なかった。
「いらっしゃいませ。」
和服を着た女の子が柔かな笑顔で迎えてくれた。
室内には畳が敷いてあり、綺麗なお花が沢山飾ってあった。
「わー…綺麗。」
思わず見とれてしまう。
靴を脱ぎ、和室風の席につく。
女の子が手作りのメニューを持って来てくれた。
品数は少なく、私は紅茶とクッキー、徹はコーヒーを頼んだ。
「華道部がカフェって、ちょっと意外だね。」
「そうだな。でもここなら他の所より静かそうだったから。」
徹は私に気を使ってこのお店を選んでくれたようだ。
「ありがとね。」
「別に。俺もうるさい場所はそんなに好きじゃないし。」
少しして、女の子が注文した物を運んで来た。
紅茶を飲んでホッと一息つく。
クッキーは見るからに手作りだった。
「いただきます。」
そう言って1枚つまみ、一口食べた。
「あ、おいしい。」
「俺にも頂戴。」
徹が口を空けた。
「自分で食べなよ。」
「いいからくれよ。」
仕方なく、食べかけのクッキーを徹の口に運んだ。
「うまいな。」
「ね。そういえば、七瀬大丈夫かなぁ…。」
紫音先輩に無理矢理連れて行かれた七瀬の姿を思い出す。
「前に大学祭の準備してる時も紫音先輩と何かあったみたいだし…。」
「別所は、七瀬のこと好きなんだろ。」
「ええ!?」
静かな室内に私の声が響き渡り、和服の女の子達に見られた。
「お前、ホント鈍いのな。」
「だって…七瀬は長く付き合ってる彼氏さんがいるんだよ?」
「ああ、そうなんだ。でも別所はそういうの気にしなさそうだけどな。」
「どっかの誰かさんみたい。」
「それは俺のことか?」
「あんたしかいないでしょ。」
クッキーをもう1枚食べる。
うん、やっぱり美味しい。
「それにしても、普段余裕な態度の七瀬が振り回されてる姿はちょっと笑えたな。」
徹が喉を鳴らして笑った。
「興味ないフリして見てたんだ。」
「別に興味ねぇよ?あの二人がどうなろうが。」
「七瀬のこと心配じゃないの?」
「七瀬はお前みたいに隙だらけじゃないから大丈夫だろ。」
「むかつく…。」
この性悪男、いつかぎゃふんと言わせてやる。