第12章 大学祭1日目
「可愛い妹さんね…まるでドールみたいだわ。」
桐生先輩が興奮気味にエミリを見て言った。
「シュリとはまた違う系統だけど…やっぱり姉妹だから顔は似てるわね。可愛い。」
七瀬がそう言うと、エミリは嬉しそうに笑った。
「美人さんに褒められちゃったー。」
「でもエミリ、本当に変わったね。お姉ちゃんビックリだよ。」
「うん…あのね、彼氏ができたの!」
姉としては聞き捨てならないセリフだった。
「彼氏!?エミリ彼氏できたの!?どんな人?お姉ちゃんに会わせなさい。」
「お姉ちゃん、お母さんと同じこと言ってるー。」
エミリのその言葉でその場にいる私以外の全員が爆笑した。
若干恥ずかしいが、話を聞かずにはいられなかった。
「それで、どんな人なの?」
「都内に住んでる25歳の人。」
「25歳!?エミリより10歳も年上じゃない。」
「犯罪じゃね?」
隣にいる徹が小さく呟いた。
「どこで知り合ったの?」
「その人、友達のお兄ちゃんなの。それで友達が紹介してくれたの。」
「仕事は?ちゃんと働いてる人なの?」
「車会社のディーラーだよ。」
良かった。
年の差はどうあれちゃんとした人のようだ。
その人と出会ったことでエミリは変わったのだろう。
「エミリ、今幸せ?」
「うん!彼氏がね、ちゃんと高校は出た方がいいって言うから、私来年から通信の高校に行くことにしたよ。」
「そうなの?エミリ偉いじゃん!」
「えへへ…お姉ちゃん、今までずっと私の味方でいてくれてありがとう。冷たくしたりしてごめんね。」
「そんなのいいの…それにこれからだってお姉ちゃんはエミリの味方だよ。」
「ありがとう、お姉ちゃん。」
この場でエミリの事情を知っているのは紫音先輩だけだが、他のみんなも嬉しそうに笑ってくれた。
エミリは展示されている写真を見始めた。
「あれ?これお姉ちゃん?」
オペラ座の怪人の写真を見てエミリが言った。
「そうだよ。」
「お姉ちゃん綺麗ー。ファントムの男の人も格好いいね!」
「それ、こいつよ。」
七瀬が徹を指差した。