第12章 大学祭1日目
お昼休憩が終わり、私達は活動を再開した。
大学祭は午後3時まで。
あと2時間程だ。
「だいぶ売れたわね。」
桐生先輩がポストカードの整理をしながら言った。
「良かったですねー。私、個人的に桐生先輩のドールのポストカード買ってもいいですか?」
「あら、買わなくてもあげるわよ。」
「え、いいんですか?」
「部員でドールに興味持ってくれたのはあなたが初めてだし。はい、どうぞ。」
桐生先輩からドールのポストカードを受け取った。
「ありがとうございます!エミリにもあげようかな…。」
「エミリって誰?」
「私の妹だよ。」
徹の質問に答えた時、聞き覚えのある声がした。
「お姉ちゃん!」
「エミリ!?」
私は目を疑った。
長野にいるはずのエミリが、校門の方から駆け寄ってきたのだ。
黒かった髪を金髪に染め、パンク系の服装をしている。
「エミリ…なんでいるの?」
「お姉ちゃんの大学のホームページ見て、今日と明日大学祭って知って…お父さんとお母さんに行きたいって話したらいいよって言われたから来たの。」
「長野から一人で来たの?」
「うん、そうだよ。」
何年も家に引きこもっていたエミリが一人で埼玉まで来るなんて…。
嬉しくて涙が出そうになった。
エミリは笑顔でみんなに挨拶をした。
「初めまして、明智エミリです。お姉ちゃんがいつもお世話になってます。」
エミリはそう言って丁寧に頭を下げた。
人と関わることを避け続けていたエミリが、こんな風に挨拶まで出来るとは…まるで別人のようだ。