第12章 大学祭1日目
あっという間に週末になり、大学祭初日を迎えた。
私達写真部は、校門前の広場の一角で写真を展示し、ポストカードを販売した。
大学祭に遊びに来た高校生くらいの女の子二人組が徹をチラチラと見ていた。
「ねぇ、そこの君達、彼のこと気になるの?」
紫音先輩が女の子達に声をかけた。
紫音先輩も徹に負けないくらいの美形だ。
嬉しそうにする女の子達を紫音先輩は言葉巧みに誘導して写真部の作品を見せた。
「オペラ座の怪人って知ってる?」
「はい、ちょっとだけ…。」
「この仮面付けてるのがこの彼ね。」
紫音先輩は徹のファントムの写真を見せた後、徹を指差した。
「マジかっこいいー!」
「あの、お名前教えてもらえますか?」
女の子達が期待の眼差しで徹を見つめる。
無愛想な徹に、女の子達の後ろに立つ紫音先輩が口パクで「笑え。」と指示した。
「…徹だよ。」
徹はエセ笑いを浮かべた。
「徹さんは何年生ですかー?」
「一年だよ。」
「じゃあ来年ここ受かったら徹さんに会えるんだー!」
「絶対に受かろーね!!」
盛り上がる女の子達に、すかさず桐生先輩が言った。
「ねぇ、ポストカード買わない?徹のファントムの写真のもあるわよ。」
「え、欲しい!」
「買います!」
そこに徹が一言。
「大学祭見て回るついでで良いからさ、写真部の宣伝してくれたら嬉しいなぁ。」
徹は最高の営業スマイルを見せた。
「わかりましたぁ!」
「あの、こっちの先輩の写真のポストカードは無いんですか?」
女の子達が横目で紫音先輩を見た。
「勿論あるよ。ついでに他のも見てくれたら嬉しいな。」
紫音先輩にそう言われ、結局女の子達は全種類のポストカードを買ってくれた。