第12章 大学祭1日目
アパートに着き、直人の車から降りた。
「直人、明日は仕事?」
「夜勤だよー。」
「そっか、頑張ってね。」
階段の下で、直人が私の手を握った。
「どうしたの?」
直人を見上げると、触れるだけのキスをされた。
「シュリ、好きだよ。」
唇を離し、そう言って優しく微笑む直人。
「うん、私も好き。」
同じように微笑むと、直人は私を強く抱きしめた。
「…どこにも、行くなよ。」
直人は何か不安なことがあるのだろうか。
あるのなら、話してほしい。
「直人、なにか不安なことでもあるの?」
直人は私を離すと、いつもの笑顔を見せた。
「なんもないよ。」
私の考えすぎなのだろうか。
今日の直人は、どこかいつもと違うように感じた。