第2章 出会いの春
「やっぱりマイダーツじゃないと投げづらいな…。」
何やら一人言を言いながら徹がテーブルに戻ってきた。
「ほら、次シュリの番。」
「ええっ、私もやるの?」
「当たり前じゃん。」
「ど、どうすればいいの…?」
「的に向かって投げるだけだよ。俺の見てただろ?」
徹にダーツを渡され、見よう見まねで投げてみる。
しかし、全然的に当たらない。
そもそも的まで届かない。
すると、後ろから徹が私の手を握ってきた。
「もっとこう、真っ直ぐ投げるんだよ。」
体が密着した状態で指導される。
徹の事は何とも思ってないが、異性とこんなに密着するのは初めてで鼓動が早くなる。
徹に手伝ってもらって、初めて的に当たった。
「やったぁ!当たった!」
嬉しくて思わず振り返ると、徹が微かに笑った。
「徹、笑うんだね。」
「なんだよそれ。俺はロボットか。」
「いや、そうじゃなくて…とにかく、笑ってる方がいいよ。」
徹は私から目を反らし、何も言わずに投げ始めた。
しばらくの間交互に投げて、少し休憩することにした。
二人並んでイスに座り、飲み物を飲む。
「俺、ちょっとトイレ行ってくるわ。」
そう言って徹は席を立った。
徹が居なくなった途端に心細くなった。
早く戻って来ないかな…。
スマホを取り出して弄っていると、隣で遊んでいた二人組が声をかけてきた。