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薔薇と向日葵

第11章 本当の気持ち


「羽山君、紫音の手を取って、愛しそうに見つめて。」

「はぁ?」

桐生先輩の指示に早速徹がキレた。

「そんなこと出来るかよ!」

「やりなさい!ファントムはクリスティーヌのことを愛してるんだから!」

「クリスティーヌって誰だよ!」

「紫音の役のことよ!」

両者一歩も引かず、全く撮影が進まない。

紫音先輩が溜め息をついた。

「もうさ、クリスティーヌはシュリがやりなよ。」

いきなり話を振られ、驚いた。

「な、何で私なんですか!」

「その方が雰囲気出ると思うよ。みんなだってこのまま撮影が進まないの嫌でしょ?」

みんなの視線が私に集まる。

すがるような目で見られ、断れる雰囲気ではなかった。

「わ、わかりました…。」

こうして私は被写体側に回ることになった。

小山先輩に着替えを手伝ってもらい、私は準備室から出た。

「とっても可愛いクリスティーヌになったよー。」

小山先輩がニコニコと笑いながら私の背中を押した。

みんなから歓声と拍手が起こる。

「シュリ、可愛いよ!別所先輩とはまた違う感じでいいよ。」

「ありがとう七瀬。」

「やっぱり女の子の役は女の子がやった方がいいね。」

紫音先輩にも褒められ、顔が熱くなるのを感じた。

最後に、桐生先輩のチェックが入る。
これが一番緊張する。

桐生先輩は私を上から下までマジマジと見ると、頬を緩ませた。

「可愛いわ~。合格!」

「はぁ…ありがとうございます。」

横目で徹を見ると、無言で顔を反らされた。

「シュリがクリスティーヌなら徹も問題ないわよねー?」

冷やかしを入れる七瀬を徹が睨んだ。

こうして、再び撮影が始まった。
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