第11章 本当の気持ち
「はい、じゃあ羽山はこれ着てね。」
「…なんすかコレ。」
相田先輩に渡された服を見て、徹の顔が引きつった。
「何って、撮影用の衣装だよ。テーマはオペラ座の怪人。ちなみに羽山はファントムね。」
「こんなの…着れるか…。」
今にも怒りが爆発しそうな徹の肩を紫音先輩が叩いた。
「羽山君、君はまだ男の衣装なんだから良いじゃないか。俺なんかこれだよ。」
紫音先輩が相田先輩に渡された服を広げた。
肩出しの黒いドレスだ。
確かに紫音先輩は男性にしては綺麗な顔をしているし体型も華奢だが、流石にこれには同情する。
「羽山君、ファントムが嫌なら俺と交換する?」
「ぜってぇ嫌だ!わかったよ、着ればいいんだろ着れば!!」
「それじゃあ私が着替えのお手伝いするねー。」
小山先輩に連れられて、徹と紫音先輩は部室の奥の準備室に入って行った。
「なんか予想以上に面白い展開になったわね。」
七瀬がクスクスと笑いながら言った。
「徹より紫音先輩の方が可哀想だよね。一応男性なのに…。」
「まぁ、あれだけ綺麗なんだし様になると思うよ。」
数十分後、小山先輩が準備室から出てきた。
「それではまず、紫音に登場してもらいまーす!紫音ー、出てきてー。」
みんなの注目が集まる中、黒いドレスに身を包んだ紫音先輩が出てきた。
ロングのウィッグを被り、化粧を施した紫音先輩は、どこからどう見ても美少女にしか見えなかった。
絶賛の嵐の中、小山先輩が小さく咳払いをした。
「次は羽山君でーす。こっちもなかなかの出来栄えだよ。羽山君ー、出てきてー。」
準備室から出てきた徹を見て、その場にいる全員が静まり返った。