第11章 本当の気持ち
「お前と出逢わなきゃ良かった、って言ってたもんね…。」
きっと私が無意識に徹に何かして、傷付けてしまったのだろう。
落ち込む私の頬を徹がつねった。
「話は最後まで聞け。」
「はい…。」
痛む頬を擦りながら、徹を見つめた。
「お前の第一印象は、地味な女。」
「…地味ですみませんね。田舎出身なもので。」
「お節介だし、無駄に世話焼いてくるし、笑えないくらい色恋沙汰に疎いし…。」
なんだこれ。
悪口大会か?
「…でも、お前の作る飯はうまい。」
「はぁ…ありがとうございます。」
「…要するに、母親に愛されなかった俺にとってお前っていう存在は居心地が良くなったんだよ。それからお前のことが気になって好きだって気付いて、他の女なんか興味なくなってお前のことばっか考えて…これじゃあの父親と同じじゃねーかって…。」
徹は半ば開き直った態度で言い放った。
「お前と出逢って、自分が自分じゃねぇみたいになったんだよ。それくらい、お前のことが好きだ。」
空いた口が塞がらなかった。
徹は私から顔を反らして言った。
「だから、お前に嫌いって言われるとすげぇショックだったし、あのヘラヘラ笑う顔が俺の父親に似てる池田にだけは渡したくなかった。あの日…お前が別所の家にいた時に電話で、会いたくない。疲れたって言われた時、母親に置いて行かれた時と同じ気持ちになって…自棄になってお前の前から消えた。」
私の中で全てが繋がった。
徹がたまに見せる悲しげな顔の理由も、"嫌い"という言葉へのトラウマの理由も。
直人を毛嫌いする理由も。
それと同時に、私は無意識に徹を凄く傷付けていたのだと気付き、申し訳なさから涙が溢れた。
「なんで泣くんだよ。」
「ごめんね徹…私知らない所でいっぱい徹のこと傷付けてたんだね…。」
「…泣くなよ。」
徹は私の隣に座り、そっと抱きしめてくれた。