第10章 行方不明の徹
別所先輩に手を引かれ、ダーツバーを出た。
シュリと徹の心配をしつつ、綺麗な夕焼けを見ながら駅に向かって歩いていた。
「石川さーん。」
別所先輩に名前を呼ばれた。
思えば入部してから初めて名前を呼ばれた気がする。
「なんですかー?」
「シュリってさぁ、彼氏いるんだよね?」
「いますよー。」
「でもどう見ても羽山君のこと好きだよね?当の本人は自分の気持ちに気付いてなさそうだけど。」
「まぁ…端から見ればそうですね。でも、最終的に誰を選ぶかはシュリが決めることですから。」
別所先輩の言う通り、シュリは恐らく徹が好きだ。
でもあの二人は…近付きすぎて上手くいってない気がする。
それに、シュリは自分の本当の気持ちに気が付かないままの方がいいと思う。
気付いてしまったらあの子のことだ、直人さんとは付き合っていられないだろう。
その時、直人さんにどう伝えるか…優しくて生真面目なあの子は物凄く悩むと思う。
あたしには、シュリの話を聞いてあげることしか出来ない。
シュリはあたしにとって特別な存在だ。
初めて出来た、本当の友達。
「別所先輩、今から話すことは一人言だと思って下さい。」
「はいはい。」
「あと話し終わったら多分泣いてると思うのでアイス買って下さい。」
「なにそれ…まぁ、いいけど。」