第10章 行方不明の徹
学校に着くと、いつもの待ち合わせ場所に七瀬がいた。
「おはよう七瀬。」
「おはよう。あれ?徹は?」
「それがいつもの時間になっても部屋から出て来なくてさ。チャイム鳴らしたりしたんだけど全然反応ないから一応先に行くってメール入れといた。」
「そっか。徹から聞いたんだけど昨日もめたんでしょ?気分屋だからまた機嫌直ったら戻ってくるんじゃない?」
「あ、昨日のこと聞いたんだ…。」
「うん。まぁそれで徹とちょっと話して…あいつシュリにお前と出逢わなきゃ良かったとか言ったって言うから、とりあえず謝ってこいって渇入れたの。」
「それで徹、私のこと探してたんだ…。」
徹は謝ろうとしてくれていたのに、私はそんな徹を突き放してしまった。
罪悪感で胸が痛んだ。
「シュリ、昨日あの後徹と会えた?」
「ううん…徹は電話くれたんだけど、私が今は会いたくないって突き放しちゃったの。徹が謝ろうとしてくれてたなんて知らずに…。」
落ち込む私の背中を七瀬は優しく撫でてくれた。
「まぁ、次会った時に仲直りすればいいじゃん。あたしも余計なこと言ってごめんね。」
「ううん。七瀬は悪くないよ。ありがとう。」
しかし、この日から徹は学校に来なくなった。
アパートに帰っている様子も無く、何度連絡をしても繋がらなかった。
徹が、姿を消した―――
大学は、春の学園祭に向けて賑わい始めていた。
「徹が学校に来なくなってもうすぐ2週間か…あいつそろそろ単位ヤバいんじゃないの?」
お昼休み、ふと七瀬が言った。
あれから徹は完全に行方不明になってしまった。
学校にも来ないし、アパートにも帰って来ていない。連絡もつかない。
私はあの時徹を突き放したことを酷く後悔していた。
私達はと言うと、昼間は講義を受け、放課後は学園祭の準備で夕方まで写真部で活動をし、忙しい毎日を送っていた。