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〜Cafe myosotis〜

第10章 -雨のおくりもの-(黒尾/赤司)


窓を叩く雨粒の音に気付き、
マスターの黒尾は
グラスを磨いていた手を止め、
ゆっくり顔をあげた。


「赤司…傘持って…るわけないか…
いや、あいつなら…」


黒尾はポツリと1人呟いたが、
逡巡すること数分…
さらに強くなってきた雨足に、
黒尾はやはり腰をあげ、
買い出しに行った
赤司を迎えに行くことに決めた。


カランカラン…


「お…」


ちょうど帰ってきた赤司の
濡れていない姿に、
やっぱり傘持ってたのか…と、
黒尾が安堵したのも束の間…
赤司の後ろから入ってきた女を見て、
さすがの黒尾も目を丸くした。


「赤司⁈何してんだよ?」


「何してる…とは?」


ポカンとしている黒尾に、
冷静にことばを返しながら、
赤司は大丈夫かい?と
後ろにいた女に声を掛けて、
奥の部屋からタオルを取ってきて、
ふわりとその女にタオルを掛けた。


「はぁ…捨て猫拾ったのか?」


まったく濡れてない赤司に対し、
赤司の後ろにいた女は、
びしょ濡れだったのだ。


「あ…の…‼︎自分で…」


「ダメだよ。しっかり拭かないと…
濡れた服も着替えたほうがいいかな。」


「おーい?赤司ー?無視すんなー?」


でも、赤司は黒尾のことばに
返事をせず、
びしょ濡れの女に顔を寄せ、
優しく髪を拭き、
濡れた女の全身を確認した。


白いブラウスが濡れて肌に張り付き、
身体のラインが強調されている…


どこかはかなげな瞳、
鎖骨あたりまでの濡れた髪…
赤司はもちろん黒尾も見惚れていた。


「やっぱり着替えたほうがいいな。」


赤司はそう言うと自然な動きで、
女の胸元のボタンに手を掛ける。


「えっ⁈あ…あの…」


黒尾ははぁ…っと
ため息をつきながら、
カウンターの中から出て、
赤司の手を押さえた。


「はーい。そこまでー。赤司ー?
がっつき過ぎー。」


「がっついてなんかいませんよ。」


赤司はニッコリ微笑み、
女の胸元から手をはなした。


「とりあえず、捨て猫ちゃん?
奥の部屋で着替えてこい?
なんか服貸してやっから。」


「え?捨て…?」


「じゃねーと、そのいかにも
優しそうな仮面かぶった
赤司クンに喰われるぞ?」


「な…っ⁈は…はい‼︎」


そんなことしないのにな…と
自嘲気味に笑う赤司を置いて、
黒尾はその女を奥の部屋に案内した。

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