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〜Cafe myosotis〜

第9章 -1日の終わりに-(東峰/木吉)


カランカラン…


あと1時間程で、また1日が終わる。
そんな日付が変わろうとしている
とある日の夜…
ひっそりと隠れるようなこのカフェに
おどおど入ってくる
メガネをかけた女性がひとり…。


「ん?いらっしゃーい。お1人さま?」


カウンターの中から
木吉が声を掛けると、
女性は木吉のデカさに驚いたのか、
さらに挙動不審になってしまう。


「え…?あ…はい。」


「そんな驚かなくても大丈夫だって。
取って食べたりしない。」


「あ…はい。あの…別に…
そういうわけじゃ…」


女性は初めて来る店に
緊張しているだけだったのだが…
とは言えず、優しく手招きする木吉に
促されるまま、カウンターに座った。


「あ…でも、人間が人間を食べないか。」


「え⁈」


「ん?はは…。
だから、食べないから安心しなって。」


マイペースな木吉に、思わずはぁ…っと
ため息をつきながらも、
自然と笑顔がこぼれている女性だった。


「やっと笑ったな。」


木吉はカウンターに座った女性の顔を
覗き込んだ。


「えっ⁈あの…‼︎
あ…あなたが変なコト言うから!」


もちろん女性は真っ赤だった。


「変なコト言ったかな?
あ、でも、オレは”あなた”じゃないぞ?」


「…?」


そこで木吉はすぅっ…と息を吸う。


「このー木なんの木♪気になる木〜♪の”木”に大吉の”吉”で木吉だ!」


「あ…はい…」


「鉄アレイの”鉄”に平社員の”平”で鉄平だ!」


「あ…はい…」


自分の名前を告げた木吉は、
ジッと女性を見つめた。


「え…⁇あ……………
檜原すみれ…です。」


1人で入ってきた女性…すみれは、
木吉に見つめられ、
自分にも名前を言うように
促されているのだと判断し、
少しの間のあとに、名前を告げた。


「すみれさん…かぁ。
うん!かわいいな!」


「えっ⁈あの…っ…」


かぁっ…っと頬を染めてしまうすみれ…


「ははっ。さっきは食べないって言ったけど、食べたくなってきたかもな。」


「な…っ?」


本気とも冗談とも…
ボケとも取れないコトを
平気で言ってのける木吉に、
すみれはただただ
口をパクパクしてしまう。


それすらも可愛くて、
木吉はずっと微笑んでいた。

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