第6章 -ありがちだけど-(花巻/岩泉)*
結局すみれは岩泉の読み通り、
ミルクも砂糖も入れて
コーヒーを飲んだ。
「あぁ…美味しかったぁ。
香りもいいし、
ミルクとも合いますね。」
「だろ?」
岩泉は得意げにこたえた。
「で?おまえ、どぉすんだ?
花巻んトコ行くか?」
「あ…えっと…その…
花巻さんは何を…?」
すみれは答えに迷ってしまう。
奥に行って何をするのか、
すみれには想像がつかない。
「行きゃわかるから。
ま、覗くだけ覗いてみろって。」
「…はい。」
少し不安だが、
特に断る理由も思いつかなかったので、
すみれは奥の部屋に行くことにした。
「そこのドアな。」
岩泉の指を差したほうへ進み、
すみれはドアノブに手を掛ける。
「おい!すみれ!」
「は…はいっ‼︎
(すみれ…⁈な…なんで名前…⁈)」
すみれはビクーッとして、
ドアノブに手を掛けたまま、振り返る。
「くくっ…(照れてやんの♪)
もう一回言うけど…
さっきの…花巻に言うなよ?」
「さっき…⁈…‼︎あ、は…はいっ‼︎」
意味深に言う岩泉のことばに、
すみれは真っ赤になってしまい、
ドアの前で息を整えていた。
その様子をカウンターの中から、
面白そうに…でも、なぜか、少しだけ
愛おしそうに眺めている岩泉だった。
トントン…
「おっ♪どうぞ〜♪」
「し…失礼します…」
ガチャ…
中から花巻の明るい声がして、
すみれは恐る恐る中へ入っていく。
「う…わぁ…」
こじんまりとした小さな部屋には、
シャンプー台が1つと大きな鏡の席、
普通の美容室のセットが
コンパクトになって、
1部屋に全て揃っていた。
「ようこそ♪Salon myosotisへ♪」
花巻はすみれの前まで来ると、
エスコートするように
すみれの右手を取った。
「えっ⁈
あっ…サ…サロン…?美容室?」
「そっ♪」
花巻はすみれの手を引いて、
部屋の中央まで進んだ。
「オレ、美容師なの。
すみれちゃん、さっき言ってたろ?
髮染めてパーマかけたかった…って。」
「…⁉︎」
「すみれちゃんさえよければ…
それ、全部やってみない?」