第4章 〜華奢〜
ふと目を覚ますと、日が傾き、空が茜に染まる頃だった。
身体を起こして周りを見渡すと、此方に気付いた翡翠の瞳と目が合う。
その目が、何処と無く面倒くさそうに、別の方向を向いた…と思ったら横から伸びてきた腕に捕らわれた。
「玲〜、やっと起きたのね?もうすぐ定時よ!ねぇ、今日は私と飲みに行かない?」
ぎゅうぎゅう抱き締められながら、そんな勧誘を受けて、ちらりと冬獅郎を見遣る。
予想通り、彼の瞳は否を示して。
「松本…。飲みたいなら何時もの連中誘え。玲が酒なんて飲めるわけ無いだろうが」
冬獅郎の言葉で乱菊の顔が不服そうに歪む。
「え〜?玲、飲めないの?」
凄く残念そうに、物凄く悲しそうに、銀灰色の瞳が揺れる。
頷こうとしていた私は、その乱菊の誘惑に負けた。
「お酒って美味しい?」
彼女に手を伸ばしながら問うと、
「うん!美味しい美味しい〜!でも玲の方が美味しそうっ」
彼女から凄まじい色香が発せられて。
伸ばした手を握られて、どさりと長椅子に戻される。
そのまま乱菊に覆い被さられた所で、室温ががくりと下がった。
少し肌寒いくらいの温度から、凍り付きそうなほどの氷点下に。
「松本…」
低い声の方に無理矢理視線を向けると、冬獅郎の周りがピシピシと凍り始めていた。
因みに氷輪丸は抜かれていない。
やっぱり常時開放型に変異したみたいだ。