第4章 〜華奢〜
閉まった扉を見届けて、玲がふっと溜息を吐く。
それから、俺をちらりと見て微笑むと、掛けてやっていた羽織を被り直して、また長椅子で丸くなった。
そんな些細な事に、どくんと鼓動が早くなるのを感じて。
誰に良かったわけじゃないと、先の言動で理解して。
自分は認められているんだと自覚した。
それだけで妙な焦燥や、靄が掛かったように重かった心が軽くなるのだから不思議だ。
執務机に座ると、奥の部屋から茶を手にして戻ってきた松本が、
「あら、玲寝ちゃったんですか?」
と、残念そうに眉を下げていたが。
「今日は彼奴に頼るなよ。偶には自分で仕事しろ」
茶を受け取りながら圧を掛けると、松本はちらりと玲を見て苦笑を浮かべて。
「疲れちゃったの、私のせいですかね」
何処と無く反省した様子で、大人しく筆を握った。
さぼり癖が板に付いた此奴にまでこんな顔をさせる玲の影響力に、微かな不安を覚えながら。