第1章 〜欠片〜
「…うん」
こくりと素直に頷く。
ここで嘘を重ねても意味は無いから。
「なんで隠した?」
その問いに、私は真っ直ぐ翡翠の瞳を見つめた。
「此処…精霊邸に入って直ぐ、この場所で生きてくのに必要な情報が流れ込んできたの。さっきの…山本元柳斎は護廷十三隊の総隊長。そんな人に、霊圧が高すぎて目を付けられると動き辛くなる…そう、思ったから」
私の返答に、冬獅郎は苦々しい顔をする。
「…情報が流れ込んで来たってのはどういう意味だ?」
「そのままの意味。空っぽの知識に、必要な情報が上書きされる。
私は…世界の一部。あくまで意思を持っただけの欠片だから。常識なんて通用しないの」
私と彼は違いすぎる。
それを自分の口で言ってしまったからか、少し心が重くなる。
「…成る程な。だが、俺達が疑問に思うのは分かってたはずだろ?その場で俺が反論してたらどうするつもりだったんだ?」
「…冬獅郎はそんなことしないよ。皆の性格だって、もう情報として知ってる。
貴方と朽木さんは、敢えて面倒になりそうな事を公にしようとなんてしないでしょう?」
それは、流れてきた情報に基づいた、確信。
けれど、少しだけ不安になった私は、ちょっとした悪戯を思い付いて笑みを浮かべた。
「あ、でも、ちょっと心配だから、口止め料あげる」
「はぁ?いらねぇよ、そんなもん」
不機嫌そうに眉を寄せる冬獅郎に歩み寄る。
「拒否権無し」