第3章 〜特別〜
「じゃあ砕蜂。目、閉じて?」
素直に目を閉じる砕蜂の額に指を当てる。
魂魄を補強し、霊力を軽く同調させてから、無意識下の制限を破壊した。
瞬間跳ね上がる霊圧を、同調させた霊力で怪しまれない程度に安定させる。
けれど、身体への負担は少しづつ引き上げた前の二人の比ではない。
「かっは…はっ…はっ」
自身の霊圧に充てられて、がくりと膝を着き、軽い呼吸困難に陥っている彼女の肩を叩いて引き戻す。
「砕蜂。落ち着いて?この力は貴女の力。集中すれば、制御出来るの」
この声が届いているのかは分からない。
瞳は虚ろで、光は見えなかった。
やっぱり、駄目か。
冬獅郎、いきなり術解いてもなんとかしてたんだけどな。
なんて思いつつ、取り敢えず自分の霊圧を上げて反鬼相殺の要領で霊力をぶつけて削っていく。
序でに天照の癒しの光を直接送って、恐慌状態から引き戻し、再び声をかけた。
「砕蜂!聞こえる?」
「はっ…く…あぁ…」
「結界は張ってるから瞬閧でも卍解でもいい!兎に角霊力削って自分で制御なさい!」
途端、彼女の霊圧が雷の様に変化する。
「ちょ、待て。結界って何処に…」
「あ、他の人、自分でどうにかしてね」
「待てぇ!」
冷静さの欠片も残っていない砕蜂に、そんな言葉が届くはずもなく。
カッと爆発でもする様に、放たれた膨大な量の雷は、隊主室内を蹂躙した。