第3章 〜特別〜
ふわりと地獄蝶が窓から入り込んできて、冬獅郎はそれを指に止めた。
『各隊長、副隊長に連絡。これより隊主会を開きます。瑞稀玲に同伴している隊長は速やかに一番隊隊主室へ連れて来てください。繰り返します…』
「…やっぱりそう来たか」
「他の死神達にも見られちゃったからね」
思い返すのは先の戦闘。
恐らく、尸魂界の索敵能力よりも早く、虚の出現に気付いたことへの言及か何か。
と言っても、私は調停者で、唯の魂魄では無いことは話しているのだから、今更何を、とも思いはするけれど。
「仕方ねぇ。行くか」
「そうだね」
この際、隊長格にだけは天照の力ぐらいなら話してしまっても良いかもしれない。
そこでふと思い出したのは、三段階開放型の抑制装置。
桃が代理で持ってきた、無骨な制御ブレスだった。
何気に持ち歩いてはいた私は、一応それを腕に着けてみる。
瞬間、キィンと高い音が響いて、抑制装置は粒子に戻った。
「…あらあら」
「…霊圧の割合が不適合すぎるんだろ」
「あ〜うん、何て説明しようかな」
「なるようにしかならねぇよ」
小さく溜息を零す冬獅郎は、けれど、安心させるように私の頭を撫でた。
「心配するな。お前は俺たち死神に敵対する意思はねぇだろ。それは何日か一緒にいた彼奴も分かってるはずだ」
「うん」
「話せるとこまでだけ、話してみるか?」
「…そう、だね」
やや不安気に頷くと、冬獅郎は安心させるように笑った。
「もし、他の死神がお前を恐れようが蔑もうが。俺は絶対に今まで通りだ。一人になんかさせねぇから」
「…うん、ありがと」
心を支配していた不安が軽くなって、私は彼に微笑んだ。