第3章 〜特別〜
「…そう、か」
冷静に受け止めた筈の声が、酷く落胆した声音だったのは、自分でも分かった。
けれど、玲は此方に向き直って、切なげに目を細めた。
「でもね、私は知りたいよ。冬獅郎と居ると心地いいし、触れられると温かい。声を聞くと安心するし、もっと側に居たいって思う。ねぇ、これじゃ駄目かな?」
考えるより先に、引き寄せて、抱き締めていた。
此奴がどんな存在で、どんなにそれが難しいことだとしても。
理解したいと、知りたいと言ってくれる玲が酷く愛おしかった。
「駄目な訳、ねぇだろ…」
胸を締め付ける感情を抑えて、低い声で告げると、彼女は安堵したように微笑んだ。
「…うん、ありがと」
その微笑みに、どくんと心臓が高鳴って。
もう手遅れなんだと、自分に伝える。
わかっていた。
この感情がコントロール出来るのならとうにしている。
例え彼女が人とどれだけ違っていようと、それは最早妨げにすらならなくて。
泉のように湧き出る感情に、気付いたが最後、溺れてしまう他に選択肢など残ってはいない。