第3章 〜特別〜
ふぅっと息を吐いて立ち上がる玲を、引き留めるように声が漏れた。
「…玲」
「…何?」
半身で振り返った彼女は、何時ものように笑ってはいなくて。
何処と無く真っ直ぐな琥珀の瞳に、見つめられて困惑する。
「怒ってんのか」
霊圧が少し不安定なのを見定めて問うと、彼女は不思議そうに首を傾げた。
「どうして、私が怒るの?」
怒るところあった?とでも言いたげな瞳に、普通怒らないのか?の自問する。
「いや、朝…」
言い掛けて、やはりこんな所で言うべきではないと言葉を濁す俺に。
「ごめんね。今の私には、冬獅郎がどうしてあんな事するのか、あの行動の意味すら、分からないんだ…。世界に聞いても教えてくれない。私にとって枷にしかならない物だからって」
枷にしか、ならない…か。
そうだ、此奴はこの世界の調停者として、世界に型作られた世界のカケラで。
確かに、其処に縛り付けられる類の感情など、唯の枷でしかない。
だから知る必要も無くて。