第3章 〜特別〜
「…もう平気?」
問いながら、彼の額に手を当てるが、熱はすっかり下がっていた。
「…悪かった」
呟くような謝罪にふわりと頭を撫でて、抱きしめ返す。
「…後一刻でも遅かったら、手遅れだったかもしれないんだから」
自分で言っておいて、身体が震える。
正直、私も氷輪丸がこんなに怒るとは思ってなかった。
知っていたら、もっときちんと念を押したのに。
「気をつける」
「絶対だよ」
少し離れた彼を見上げると、ふっと唇が重なった。
「…冬獅郎?」
その行動の持つ意味に、まだ気付けない私は、前と同じ様に名を呼ぶことしか出来なくて。
「…いや、悪い。こんな時間か。すぐ行く」
「無理してない?」
「大丈夫だ」
彼の大丈夫を信用してはいけない事は、分かっているのだけれど。
乱菊も心配していたし、彼の顔色も悪くなかったので、私は黙って部屋を出た。