第3章 〜特別〜
あの後、白哉は着物も浴衣も髪留めも買ってくれて。
死神ですらなくて、お金なんて持っている訳もない私は、いつか絶対返すからと白哉に約束を取り付けた。
彼は贈り物だと引いてくれなかったから、それはもう、一方的に。
そして、夕方。
屋敷に戻って、夕食前の入浴中。
此処は好き。
私の部屋にはお湯を張れる湯船は無くて。
大浴場はあるらしいのだけれど、何処と無く行き辛い。
此処だと一人でどんなにぼぅっとしていても、文句を言う人は居なくて。
ふっと頭に靄が掛かって、また長湯し過ぎたのだと、反省しながら石造りの湯船から上がる。
身体と髪を適当に拭いて、浴衣を着て外に出れば、自分よりずっと体格の良い身体とぶつかって。
視線を上げるより先に鼻を掠める香りで誰だか理解した私は、大人しくその腕に収まった。
「また逆上せたのか…」
呆れ混じりに掛けられる言葉に謝って、手拭いで髪を拭いてくれる手に目を閉じる。