第3章 〜特別〜
「破道の一、衝」
不意に聞こえた言霊が、霊圧が酷く恋しくなって、吹き飛ばされた男達を振り返りもせずに飛び付いた。
「玲…」
「ごめんなさい。ありがと」
するりと髪を撫でてくれる手に安堵する。
膝をついて合わせられる漆黒の瞳に心が温かくなった。
「どうした?あの程度の輩に押し負けたか?」
心配そうに揺れる瞳。
それは私の弱さを責める色では無くて。
けれど、首を振る。
霊力も持たない魂魄に、押し負ける訳がない。
動けなかったのは、余りに違い過ぎる温度に困惑したからで。
触れられただけで吐き気を訴える自分の身体に混乱したからで。
一言、言霊を呟けば、弾き飛ばせたはずなのに。
それが出来なかったのは、何が違うのか、見極めたかったからで。
でも、もう分かった。
何がじゃない。
全てが違う。
瞳に宿る穏やかさも、触れる手の優しさも。
凪ぐように穏やかな霊圧も、奥に隠された感情も。