第1章 〜欠片〜
何だか空気が重い。
なんでだろうと、自分の言動を振り返っていると。
「…玲」
先を歩いていた朽木さんが何か呟いた。
「玲と名乗れ」
それが自分に向けられた言葉だと気付いて、目を瞬かせる。
「…玲?」
「人の多い場所では、呼称が無いと不便だからな」
「あ…ありがとう」
考えても無かった言葉に、素直に頷く。
「なら、姓は瑞稀な」
今まで黙っていた日番谷君が、なんでか姓までくれた。
「瑞稀玲?」
「あぁ」
頷いた日番谷君は、なんでか嬉しそうだった。
「ありがと。えっと…ひつがや、くん?」
「…呼び辛けりゃ名前でいい」
「…とうしろう?」
「…あぁ」
ぱちりと合った翡翠の瞳は、ふいと逸らされてしまったけれど。
その後、流れ込んできた戦闘術に基づいて瞬歩して見せると、二人も同じ様に動いてくれた。
あっという間に着いた大きな建物。
その部屋の中に居たお爺さんに、さっき貰ったばかりの名を名乗ると、驚いたように目を見開かれた。