第2章 〜天賦〜
冬獅郎の腕の中で目を閉じる。
さっきまでの虚無感はもう無くて、今は凄く暖かくて心地いい。
けれど、冬獅郎が何処と無く眠り辛そうだから、じっと見上げていると、目があった。
何を思ったのか、ぐっと顰められる眉間に手を伸ばすと、枕になってない方の手で止められる。
「本当にお前は…」
呆れたように息を溢す冬獅郎に胸が締め付けられて。
絡め取られていない手で頬に触れると、一瞬視界が暗くなって唇に暖かい物が触れた。
「…んっ…?」
何時の間にか仰向けになった私の上に冬獅郎が居て。
きょとんとして翡翠の瞳を見返すと、その瞳が苦るし気に揺らいだ。
暫く至近距離で見つめあっていると、彼に掴まれていた手が解放される。
どさっと音を立てて隣に戻る彼の葛藤は今の私には読み取れなくて。
「冬獅郎?」
名前を呼ぶことしか出来なかった。
「…今のはお前が悪いんだからな…」
何処と無く言い訳がましい言葉に素直に頷いて、また擦り寄ると、ふわりと抱きしめてくれる。
息を吸い込むと冬獅郎の香りがして。
酷く安心した私は眠りに落ちた。