第2章 〜天賦〜
「此処を出て何処へ行く?」
部屋には帰らないだろうと思った。
今の此奴は、多分、自分の感情に戸惑っている。
「白哉のとこ…」
玲が最後まで言葉を紡ぐ前に、抱き締めていた。
行かせたくなかったから。
「ここで寝ろ」
「いいの?」
至近距離で見上げられると、理性が切れそうになる。
それをなんとか押し留めて、濡羽色の髪を撫でた。
「寂しいんだろ?」
「…うん」
一人になって、此処まで不安定になるのなら、昨夜は彼奴と寝たか。
じゃなきゃ辻褄が合わねぇな。
導き出した答えに苛立ちながらも、玲に悟られないように、無理矢理鎮める。
「冬獅郎?」
不思議そうに此方を見上げる此奴は、思ったより勘が鋭い。
「なんでもねぇよ。ほら、寝るぞ」
玲を解放して、ベッドに戻ると、後ろを大人しく付いてくる。
端に寄って寝転べば、すぐ側に擦り寄ってきて、俺は華奢な身体をまた抱き締めた。