第2章 〜天賦〜
暫くすると乱菊が息を切らして戻ってきて。
また抱き着かれたので、少し呼吸を整えさせて。
お茶を淹れて手渡すと、嬉しそうな笑顔をくれて。
冬獅郎の仕事も少し手を貸して終わらせた頃。
ふと、白哉の言っていたことを思い出した。
「そう言えば、冬獅郎。白哉が明日買い物連れてってくれるって」
「…仕事は?」
「お休みするって言ってたよ」
「…そうか」
それ以降、黙ってしまった冬獅郎に首を傾げて。
乱菊に視線を送ると手招きされた。
「隊長の前で他の男の話はしちゃダメよ」
「どうして?」
「嫉妬しちゃうんだから」
「嫉妬…?」
理解出来ない単語に首を傾げていると、後ろから手が伸びてきて、冬獅郎に捕まえられた。
「松本。余計なこと吹き込むな」
「余計じゃないですよ。隊長が不機嫌になるから…」
「隠される方が嫌だろ」
「…それもそうですね」
そんな会話を首を傾げながら聞いていると、何処からか、定時終了の鐘が鳴る。
「偶には飯でも食いに行くか」
「隊長の奢りですか?!」
「今日だけだぞ」
「やったぁ!」
はしゃいでいる乱菊は、私の状況が見えていないらしい。
お腹に腕を回されたまま、抱えられているのは少し苦しいのだけど。
「…冬獅郎」
「あぁ、悪い」
名前を呼んだだけで降ろしてくれた冬獅郎に少し恨みがましい視線を送る。
「苦しいんだからね」
「…もうしねぇよ」
「じゃあ許す」
自分がやった事ながら、彼の身長を伸ばしたことを軽く後悔する私。
これで何度目だったか、しれない。