第2章 〜天賦〜
「わぁ…有り難う、日番谷君!隊長が居なくなってから処理に困る書類沢山あって…」
そこで一瞬暗くなった雛森だったが、すぐに笑顔を取り戻し、此方に向き直る。
「瑞稀さん!私のことは桃でいいからね!敬語も無しにしよう?」
「あ、うん。じゃあ私は玲って呼んでね」
「わかった!じゃあ玲、日番谷君、私戻るね!また!」
慌ただしく去っていった桃を見送り、ふぅっと息を吐く。
「元気だね」
「空元気だろうがな」
あぁそうか。
あの子は自隊の隊長が大好きで。
まだ、ちゃんと現実を受け入れられてはいないんだ。
そういった事を、無機質な情報として知っている事が少し嫌になって。
「冬獅郎の分も片付けちゃおっか」
少し無理に笑顔を作った。
「…お前は少し優し過ぎるんじゃないか?」
何と無く書類の事を言っているんじゃないとは分かっているけれど。
「面倒な事は得意な人間に任せればいいんじゃない?」
敢えて気付かないふりをして。
優しすぎるのは冬獅郎も一緒だよと、心の中で言い返しておいた。