第2章 〜天賦〜
お茶を一口飲んだ白哉がぽつりと呟く。
「美味いな」
「ふふ。ちゃんと手順守って淹れるとそこそこ美味しくなるんだよ」
嬉しそうにそう答えて、茶菓子に手を伸ばす玲。
今日は饅頭らしい。
躊躇なく齧り付く彼女を優しく眺め、白哉は自分の分を手に取った。
穏やかな時間が過ぎる。
白哉は決して口数が多い方ではない。
しかし、玲は彼の瞳に映る感情から、大体こんな事を思っているんだろうなと察してしまう。
それで、会話の様なものが成立してしまう異質な光景を、恋次は執務机から遠目に見ていた。
―朽木隊長が気にいるわけだ。
そんな風に納得しながら。
休憩を終えた後、暇を持て余した玲は、白哉の横で執務を手伝い。
あっという間に書類を片付け、次いでと言わんばかりに恋次の分まで終わらせてしまった。
「…お前ってさ…いや、やっぱいい」
最早彼女の出来ないことなど思い当たらなかった恋次は、突っ込むのを止めた。
何故、昨日入ったばかりの無所属死神が、隊長、副隊長の執務を手伝えるんだとか、幻覚なんて高等技術をどうやったら悪戯に使おうと思い至るのかとか、問い詰めたいことは沢山あるが、いかんせん白哉が怖すぎるのだ。
黙っておくことに越したことは無いと口を閉じた恋次は、そのまま白哉に昼食の調達を命じられ、隊主室を飛び出した。