第2章 〜天賦〜
「やけに仲が良いのだな」
一歩前を歩く彼女の言葉に、少し考える。
確かに、昨日会ったばかりにしては、気安く話し過ぎている気はするけれど。
「…今更日番谷隊長とか言ったら、どんな顔するんでしょう、彼」
くすと笑ってそんな事を呟いてみる。
「やってみてはどうだ?」
「面白そうですね」
笑いあってから、ふと砕蜂さんをじっと見つめる。
彼女からは今や警戒の欠片も感じなかった。
「見張り…じゃなかったんですか?」
少し意地悪気に首を傾げてみせると。
「馬鹿らしくなってな」
そんな言葉が返ってきた。
更に分からなくなる。
「砕蜂と呼べ。慣れぬその口調も余計だ」
「…えーっと。うん、ごめんね?」
突然の申し出に、けれど有難く頷くと、彼女も少し笑った。
「構わん。お前はそちらの方が合うている」
「え~…せっかく一晩で覚えたのに」
軽く愚痴を溢すと、ぽんっと頭に手が乗った。
「他の隊長達に使えば良い」
どことなく慰めるようなそれに、嘘を吐いている罪悪感が心を埋める。
「…うん、そだね」
出来るだけ自然に頷くと、砕蜂が足運びを緩めた。
「着いたぞ」
その言葉で顔を上げると、何時の間にか六番隊の隊主室が見えていた。
「あ、本当だ。ありがと、砕蜂」
「それで良い。またな、玲」
そう言い置いて、踵を返す二番隊の隊長さん。
今度遊びに行こうかな、なんて思いながら、私は六番隊の隊主室へ戻った。