第2章 〜天賦〜
「で、茶がなんだって?」
私が落ち着いたのを見計らって、冬獅郎が口を開く。
「あ、うん。お茶を貰いに来たの。六番隊の隊主室、茶葉も置いてないみたいで。買いに行くのは私一人じゃ行けないから」
「そうか。今日は向こうに居るのか?」
「そのつもりだけど…」
答えると、冬獅郎がすこし寂しそうな目をした。
「なら、定時になったら此所に来い。部屋に案内してやる。松本」
「はぁい」
彼の声で、乱菊が隊主室の奥に消える。
それを見送ってから、砕蜂さんが首を傾げた。
「部屋に案内すると言ったか?ならば昨夜はどこで寝たのだ?」
「白哉のお屋敷…です」
「…そうか…」
少し気の抜けていた私が、語尾を補足したことには触れず、二人は複雑な表情を見せた。
「…名前で呼ぶようになったのか」
目を逸らしながら呟く冬獅郎が途轍もなく可愛いと感じるのは私だけなんだろうか。
ぎゅって抱きついて頭を撫で回したい。
絶対怒るからやらないけど。
というか、身長が伸びた彼の頭には、簡単には手が届かないし。
やっぱり、小さいままが良かったかな。
なんて、一人考えていると、冬獅郎と目が合った。
「…彼奴の方が…いや、何でもない」
何か言いかけて、砕蜂に目を移し、口を閉じる冬獅郎。
翡翠の瞳は翳っていて、何か言わないといけない気がするのに、なんて言っていいか分からない。