第2章 〜天賦〜
十番隊の隊主室に着くと、砕蜂さんが一歩下がったので、私が扉を叩く。
「瑞稀です。少し…
言い終わらない内に、冬獅郎が勢いよく扉を開けた。
「玲!彼奴に何もされてないか?」
もの凄い剣幕で問うてくる冬獅郎に、私は首を傾げる。
「何かって…何されるの?」
「だから…
そこで、冬獅郎はやっと私の後ろに砕蜂さんがいる事に気付く。
一つ二つ、深呼吸して自分を落ち着かせた彼は、砕蜂さんに視線を向けた。
「…送ってくれたのか」
「一人にさせる訳には行かぬからな」
「礼を言う。用はそれだけか?」
「あ、駄目だよ、冬獅郎。私お茶貰いに来ただけなんだから。だからすぐ…
「あー!貴方が玲?昨日から気になってたのよ!やっぱり可愛いわねぇ」
そんな大きな声と共にふわりと金の髪が靡いて、私は息が出来なくなった。
顔を上げると、銀灰色の大きな瞳と目があった。
「松本、副隊長…苦しいです…」
思い切り抱きしめて来る彼女に抗議すると、綺麗な顔がむっと歪む。
「隊長には普通に話すのに、私には敬語なの?乱菊で良いのよ。わかった?」
「…わかった、から…じゃあ乱菊、離して」
再び抗議すると、笑顔で開放してくれるお姉さん。
一気に空気が肺に入って、少し蒸せる。
「騒がしいな」
「…いつもの事だ」
後ろで砕蜂さんと冬獅郎が、呆れを孕んだ眼差しで乱菊を見ていた。