第12章 〜化身〜
「傷治すぐらい好きにしろ!即死させりゃあ済む話だ!」
荒々しい男の声が響いて。
本能的に畏怖を煽る、恐ろしく尖った禍々しい霊圧が大気を震わせた。
冬獅郎はそれが月読の物だと気付く。
轟と突風を巻き上げて突っ込んでくる黒い男に、玲は手を翳して何かを早口で唱えた。
瞬間、光り輝く鎖が月読に巻き付いて、向こうの空間へと引きずり込む。
「あ、ごめんね。邪魔して」
くすと笑って、出てきた穴へと戻り、それが塞がる様子を見て、冬獅郎は少し安堵した。
案外元気そうなその姿に。
「…う、わぁ、あんなの屈伏させられるのかい?」
月読の霊圧を感じ取った京楽がぶるりと身体を震わせる。
「良く、あんな物を飼っていたものだな」
禍々し過ぎる奴の霊圧は自身の霊圧で相殺したのだろう浮竹が、それでも冷や汗を流しながら呟く。
雛森や伊勢はへたり込んでいて、暫く修行は無理そうだ。
存外、更木の霊圧に慣れているやちるが元気な事が彼にとって少し意外だったりする。