第12章 〜化身〜
霊子変換で霊力を回復させてから、私は自分の意思で精神世界に入り込んだ。
そこは前よりもずっと、生命の息吹が感じられる場所。
昏く何もない場所は、封じられている月読の半径数キロだけだった。
「月読。来たよ」
「はっ!随分悠長だなぁ」
俯いていた彼の顔が上がる。
そして、血のように紅い瞳が開かれた。
「まぁ、誰かさんの所為で熱あったし。そんな状態で戦えないでしょ?」
「あぁ、あのまま来てくれりゃ即刻殺して今頃俺が外に居たのによぉ」
「私が体調不良じゃなきゃ勝つ自信は無いの?」
くすりと笑って挑発すると、月読はこめかみに青筋を浮かべる。
「言うじゃねぇか。死んでも後悔すんなよ」
「えぇ。封印解いてあげるから、さっさと具象化してらっしゃいね」
すっと四色の鎖に触れると、彼の口角がにやりと釣り上がる。
禍々しく跳ね上がる霊圧に恐怖など抱かない。
此処では天照が守ってくれる。
けれどこの先彼女の力は使えない。
斬魄刀の卍解の修行は同調。
彼を扱い、彼に認めさせなければ、何の意味も無いのだから。