第12章 〜化身〜
息を吐く暇もなく何度も口付けられて、窒息しそうになって漸く、彼が少し離れて。
「俺はもう子供じゃねぇ」
苛立たしげに呟かれる言葉。
何処か焦燥を浮かべる彼の頬に手を伸ばして、呼吸はまだ整わないまま、肯定する。
「はぁ…うん…、知ってる、よ?」
今の彼に対して子供扱いは、何故か分からないけれど地雷の様だ。
小さい時に暗に小さいと言っても、そう怒らなかった筈なのだけれど。
まだ近くにある彼の唇に自分から口付けると、彼の瞳が見開かれた。
白哉と比べれば、まだ心は不安定かもしれない。
けれど、あれは大人とか子供とかそういう次元のものじゃ無いから。
私は彼等にはどちらも、恐怖を感じない限り触れる事を拒まないし、自ら触れたいとさえ思うのだから。
「お前、前に簡単に男に触れるなって言っただろ」
「うん」
「それが自分が反撃出来ない相手の時は、更に警戒しろよ。じゃなきゃ…」
特殊加工の死覇装を少し下にずらされ、胸元に紅い華を刻まれる。
そのまま、帯すらも解いてしまおうとする彼に慌てて抱き付いて止める。
「冬獅郎。私、貴方が子供だなんて思って無いよ。
だから、そんな当て付けみたいなの止めて?」
悲しくなって彼を見上げると、翡翠の瞳が閉じられる。
「…悪い」
ぽつりと呟かれた言葉に少し安堵して彼の髪を梳く。
罰が悪そうに逸らされる瞳にくすりと微笑んだ。
「怒ってないよ。ちょっと怖かったけど」
「…前みたいに、弾かねぇのか」
「出来るなら、拒絶はしたくないの。力で弾くのってなんか、違うでしょ?」
何が違うのかは良く分からないけれど。
今霊力で弾くと、彼が酷く傷つく様な気がしたんだ。
ぎゅっと回される腕の中で、目を閉じる。
子供の様に首筋に顔を埋める彼の柔らかい髪を撫でながら。
私の中で、優先順位が変わってきていることを自覚させられて、けれど何処かそれに暖かさを感じていた。