第12章 〜化身〜
「てめぇは、何で他人事なんだ!」
飛び火してきた話に首を傾げる。
流石に見ていて楽しいからなんて言えない。
「まぁ、冬獅郎。落ち着いて」
「俺は冷静だ」
その冷静な筈の冬獅郎に、腕を掴まれて担がれる。
どう見たって普通の光景じゃないはずだけど。
「冬獅郎?!ちょっと降ろし…」
私の言葉は最後まで言えなかった。
凄い勢いで景色が反転して、いつの間にか十番隊隊舎の、隊長格用の仮眠室の前に居たから。
「…冬獅郎…?」
嫌な予感しかしなくて、でも逃げるタイミングは完全に見失って。
部屋に押し込まれて、閉じた扉の横に背を預けると、あっという間に逃げ場を失う。
右手は掴まれて、左は彼の手が付いていて。
すぐ目の前に、彼の整った顔があって。
力や体格の差は歴然。
霊力を消費しなきゃ逃れるすべは無いのだけれど。
それすらも、深い口付けで奪われる。
彼の香りと、絡まる舌が身体に熱を帯びさせて。
思考を、止められる。