第12章 〜化身〜
三番隊隊主室にて、副官お手上げの書類を片付けながら、私はお茶をこくりと飲んだ。
独特な苦味のあるそれは、多分高級な玉露。
そして、書類は大分無理して減らされている事を伺わせるほど少なかった。
そこまで違和感を感じていて、黙っている訳にも行かない。
殆ど視線を合わせない吉良を見遣って、湯飲みを置く。
「ねぇ、吉良君。書類、これだけじゃ無いでしょ?」
「…どうしてだい?」
「貴方と同じ現世任務に降りてた修兵の部屋は書類倉庫。行ってなかった桃の所でさえこの倍はあったけど?」
問い詰めてみると、気まずそうに目を逸らす彼に息を吐く。
「出来ない書類だけでいいから、出して。終わったら直ぐに出て行くから」
「あ、僕はそんな…」
「良いよ。どちらかと言うと貴方の反応が正常。私の存在を簡単に認められる周りがちょっと異端なだけ」
自分で言ってて少し悲しくはなるけれど。
力を隠しもせずに振るう事で、畏怖を示す者が現れる事ぐらい初めから承知していて。
それは奇しくもバウントのリーダー狩矢が言った通りの反応なのだから。
「すみません。…お願いします」
何処に隠していたのか持ってこられた書類の束に少し微笑む。