第12章 〜化身〜
「うん。後、如何しても出来ない書類があったら何時でも声かけてくれて良いよ?それが嫌なら、十番隊か六番隊の隊長宛に回しちゃってくれれば、やってあげるから」
「…どうして」
絞り出す様な声は、少し震えていた。
「吉良君、顔色悪いから。暫く、あまり寝てないでしょ?」
だって現世任務に就いて居たのに、書類がこれだけなはず無い。
隊長不在の此処は、書類倉庫の様に、とは言わないけれど、机が埋もれるぐらいには溜まっていたって不思議は無いのだ。
それを察して、総隊長は私を差し向けたのだろうから。
「…そう、ですね」
疲れたように肯定する彼を見兼ねて、私は手許に虹色の光を集束させる。
形作られた沢山の小さな丸い錠剤を、小瓶に詰めて彼に渡す。
「これ、一刻でその人に必要な睡眠が取れる調整薬。前に修兵にも渡したの、知ってるでしょ?」
以前宴会を開いてくれた時に愚痴を零す檜佐木に餞別として渡したのと同じ物。
彼が素直に飲むとは思えないけれど、何もしないで居るのも無理だった。
「たった一刻で…?」
「うん。気になるなら飲んでみれば良いよ。その間に片付けちゃうから」
「いや、就業時間内に寝る訳には…」
興味は有るが、真面目さがそれを許さない。
そんな風に首を振る彼の口に、なら大丈夫かと、同じ薬を創って放り込んだ。
私を信用出来ないから飲めないという訳では無さそうだったから。
まぁ、少なからずそれもあるかもしれないけれど、些細なものなら薬の効果を知れば薄れる。
そんな思惑と共に。
酷い睡魔に襲われてふらふらになっている彼を黙って長椅子に寝かせた。