第11章 〜予兆〜
「白哉。大丈夫、だよ?」
「その様な身体で何を言う」
「大丈夫。今、天照が治せないのは…封印の反動が…時間制の、物だから。六刻もすれば、縛りは解けて、治癒も出来るの」
「六刻…後、二刻程か」
時間の話をしていて、私は忘れていた事を思い出す。
「あ…修行場所の扉、開けてない」
「案ずるな。既に地獄蝶にて、其方が倒れたと各隊長達には報告を入れた。待っておる者など居まい」
それを聞いて安堵する。
自分で言い出したことなのに、意識を失って忘れるなんて情けない。
しゅんと肩を落としていると、白哉にふわりと撫でられた。
「気にせずとも良い。其方の所為では無かろう」
「私が…月読と向き合って無かったから、暴走したの。飲まれることに恐れて、対話さえ出来なかったから。私の所為だよ」
「恐れは人の心が生むもの。ならば、其方に心を与えた我等も悪いという事になるな」
「…白哉、それ、無理矢理過ぎ…」
「否。彼奴…月読が言っていた。我等が其方に心を与えた所為で、其方に隙ができ、出て来られたと」
「…隙、か。確かに、揺れてたね。私」
呟くと、白哉の真剣な瞳と目があった。
黒曜の様な、澄んだ瞳と。