第11章 〜予兆〜
「きっかけが、あったであろう」
真っ直ぐなその眼差しは、嘘や誤魔化しを許さない。
「桃と、話してたの。その会話で出てきた、愛って何だろうって考えた。そしたら…頭割れそうになって。意識霞んで。それで」
「彼奴が起きたのか」
「ごめんね、理由、くだらなくて」
私の心の変化に、世界が拒絶を示した。
月読は、普段自分を押さえ付けているそれが私に向いた隙を突いたんだ。
不安定になった、私と世界に、牙を剥くために。
「そんな事は無い。だが、急く事もあるまい」
「うん…そう、だね」
また、意識が遠くなる。
もう少し、この温もりを感じていたいのに。
気怠い身体が、許してくれない。
「白哉…口付け、して?」
ぼんやりとした意識の中でも、彼が驚くのが見えた。
けれど直ぐに淡く笑って。
唇に触れた温もりに安堵して、私はまた、眠りに落ちた。